🟥 HONDA 旧車ガイド(1958–1985)―― “高回転・高精度”で時代を変えたエンジン屋の物語
世界のモーターサイクル史においてHondaは「大量生産=高品質」を現実にした唯一のメーカーだ。1950年代末、軽量・高回転・低振動のエンジン設計を武器に欧州を席巻。カムの精密制御、薄肉鋳造、量産工程の品質保証までを含む総合技術は、のちの日本車標準を作り上げた。ここでは1958–1985の代表機を軸に、旧車としての見どころを整理する。
1. 先史 ― “ドリーム”からスポーツへ(1958–1962)
Dream C70/C75はプレスフレームと縦置きOHVで普及車の基準を塗り替えた。やがてCB72(250)/CB77(305)が登場し、空冷並列2気筒・SOHC・高回転というホンダ的スポーツの雛形が完成。軽量車体に高回転型の気持ちよさ――これが「ホンダらしさ」の原点だ。
2. DOHCショック ― “ブラック・ボンバー”と量産高性能(1965–1967)
CB450 K0 “Black Bomber”は量産車としては異例のDOHC並列2気筒を採用。アルミ合金の活用やバルブスプリング設計など、レース開発の知見が民生に落とし込まれた。結果、ミドルクラスで欧州勢に真正面から挑む実力を獲得する。
3. 四気筒の時代 ― CB750 Four(1969)と世界標準
CB750 Fourは量産並列4気筒+フロントディスクを世に広め、以後の世界標準を確立。高回転域の伸びと耐久性、扱いやすい電装・始動性まで含めて「日常で使える高性能」を証明した。ここを起点にマルチシリンダ時代が本格化する。
4. 若者の象徴 ― CB400 Four(1974)と軽快ハンドリング
CB400 Four(408/398)はコンパクトなDOHC直4に4-into-1集合管を合わせ、都市とワインディングを軽やかに駆け抜ける“等身大スポーツ”を体現。いわゆる「ヨンフォア」文化は、今日のカフェレーサー的審美にも大きな影響を与えた。
5. 技術の極 ― CBX1000(1978)と6気筒の到達点
CBX1000はDOHC直6・24バルブを横置きで量産化した技術ショーケース。量感のあるサウンドとスムーズネスは唯一無二で、旧車としての維持難度は上がるが、「体験」としての価値は圧倒的だ。
6. 1980年代の完成度 ― VF/CBR前夜
1980年代に入ると、エンジンの高回転化/フレームの高剛性化/ブレーキの大径化が同時進行。空冷直4の熟成とともに、水冷V4やフルカウルスポーツ(CBR)前夜の胎動が始まる。整備性と部品供給の観点では、空冷直4のCB-F/CBX系が旧車として取り組みやすい。
代表機のクイック年表
| 1959 | Dream C70/C75 ― 普及車の質感を刷新 |
|---|---|
| 1961 | CB72/CB77 ― 高回転・軽量スポーツの原点 |
| 1965 | CB450 K0 ― 量産DOHCの衝撃 |
| 1969 | CB750 Four ― 世界標準の確立 |
| 1974 | CB400 Four ― 若者文化の象徴 |
| 1978 | CBX1000 ― 直6の到達点 |
| 1984 | CB750F/CB1100F ― 空冷直4の熟成 |
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まとめ
ホンダは「毎日乗れる高性能」を大量生産で実現したメーカーだ。
旧車として手に入れてからも、整備計画と部品選定さえ誤らなければ、いまなお“道具としての信頼”を裏切らない。
【編集・出典メモ】
本稿はメーカー公式資料・当時のカタログ・クラブ誌の代表値をもとに要点化しています。年式差や輸出仕様の違いにより、数値は個体により前後します。

