【概要】CCM “BSAベース モデル群”(1971–1978)
Clews Competition Machines(CCM)は、1971年にBSAのコンペティション部門が閉鎖されたのを受け、元ワークスメカニックのアラン・クルーズ(Alan Clews)が立ち上げた英国モトクロスメーカー。
初期のCCMは、すべてBSA B50(498cc OHV単気筒)をベースにしたカスタムレースマシンでした。
BSAの優れたトルク特性を維持しつつ、CCMでは軽量クロモリフレーム、手溶接の燃料タンク、改良クラッチや強化クランクケースを採用。
これらは「CCM 500 MX」「CCM 540 MX」「CCM 580 MX」「CCM 604 MX」などへ発展し、1970年代中盤にはモトクロス世界選手権(GP)にも参戦。
英国製4スト単気筒の名声を、2スト全盛期の中で最後まで守り抜いた存在です。
【主なモデル系譜】
| モデル | 年式 | 排気量 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| CCM 500 MX | 1972 | 498cc OHV | BSA B50ベース。初代モデル。 |
| CCM 540 MX | 1973 | 540cc OHV | ボアアップ版。トルク重視チューニング。 |
| CCM 580 MX | 1974–1976 | 578cc OHV | 最も著名な初期型。GP参戦車両。 |
| CCM 500 GP Replica | 1976 | 500cc OHV | Jeff Smith向けスペシャル。軽量化モデル。 |
| CCM 604 MX | 1977–1978 | 595–604cc OHV | BSA系最終進化。以後Rotax世代へ。 |
【技術と特徴】
- ベースエンジン:BSA B50(OHV単気筒・4ストローク)
- 点火:ポイント式 → 後期一部電子化
- 冷却:空冷
- フレーム:手溶接クロモリスチール
- トランスミッション:4速
- 重量:約110〜115kg(MX仕様)
- 最高出力:約42〜45hp(580cc仕様)
- 最高速:約90mph(公道仕様換算)
初期CCMの魅力は、工芸品的な溶接品質と、BSA Gold Star譲りの鋭いレスポンスにあります。
量産ではなく「個人製作の競技専用車」として誕生したため、現在でも現存台数は非常に少なく、クラブレベルでは高値で取引されています。
【総評】
CCM BSAベース時代(1971–1978)は、英国モトクロス史における最後の“純粋な4ストローク・レーサー”の系譜です。
ClewsがBSAの魂を受け継ぎ、英国職人気質をそのまま走らせたこのシリーズは、今日のCCM Spitfireシリーズにも連なる精神的な原点といえるでしょう。

